インプラント歯科治療の成功判断基準

歯科インプラントイメージインプラント歯科治療の成功率は残念ながら100%ではありません。

インプラントの成功の基準は次のとおりです。

  1. インプラントは、患者と歯科医の両者が満足する、機能的ならびに審美的な上部構造をよく支持している。
  2. インプラントに痛み、不快感、知覚の変化、感染の徴候などがない。
  3. 臨床的に診査するとき、個々の連結されていないインプラントは動揺しない。
  4. 機能下1年以降の経年的なインプラント周囲の垂直的骨吸収は0.2mm以下である。

※Smith DE,Zarb GA.Criteria for success of osseointegrated endosseous implant.J Prosthet Dent 1989;62:567-572 Albrektsson R,Zarb GA.Current interpretations of the osseointegrated response:Clinical significance.Int J Prosthodont 1993;6:95-105.

即ち、『骨と結合』がされているかどうか?が一番の成功判断基準になります。

インプラント歯科医療の安全性は確立されたものですが、中には、患者さんによって人間の身体がもつ生体的防衛反応、つまり拒絶反応によって『骨と結合しない』という事も無いとは言い切れません。
人間の身体がもつ生体的防衛反応、すなわち、人間の身体には異物が体内に侵入した場合に、それを外に排せつしようという働きがあります。
インプラントも例外ではありません。
もし、身体がインプラントを異物だと判断すれば、『骨と結合しない』のです。
しかしながら、現在の歯科インプラント技術は、過去の症例等によって飛躍的に進歩し、生体的防衛反応が出ないように施術する(身体が異物だと判断させない為に、無菌的に処置をすると)ことが出来るようになってきています。

また、成功か否かを判断するのに「時期」の観点からも2つの成功基準があります。
1つめは、目先の成功です。つまり、インプラントを埋入する手術が無事に済み、その上に歯をつけて一通り歯科インプラントが完了した段階で、上記a~cの確保が図れれば、まず第1段階として成功です。
そして、2つめは、その後10年20年と長期間にわたって、インプラントが満足して使えることの成功です。これには、口腔衛生の徹底や定期検診が必要になります。
(→インプラント歯科治療後のメンテナンスの重要性について)
1つめが「術者(=歯科医師)」の技量に左右されるのに対して、2つめは、「患者」側の努力に左右されます。

なお、顎のダメージが小さくて済むように計画された治療では、失敗に終わった場合であっても、同じ場所にもう一度埋め直すことにより、1回目よりも非常に高い確率で成功します。それはインプラントの種類の選択と治療時期や検査時期なども含めた綿密な計画や正確な実行にかかっています。

つまり、初めから、全ての人に必ず100%の成功を続けることは出来ないこともあると用心して、失敗してもリカバーできる計画を立てることによって、結局のところ成功に導くことが出来ます。

一方、治療前より状況が悪くなり、もう対策があまりなくなってしまったり、手術に伴う合併症で予定外の症状に困るような失敗もあります。初めからもし起きても小さい失敗で済み、結局は成功するような万全の計画で臨みたいものです。

インプラント歯科治療の成功率

インプラントの成功率は、インプラントを埋入する部位によっても異なりますが、成功率はおよそ97%だと言われています。ここで、「失敗」というのは『骨と結合しない』という事です。

【研究者らによる論文に見る成功率】

  1. フィクスチャー712本による293個のインプラント補綴物5年間の安定率は98.7%
    Torsten Jemt,DDS,PhD INT J Oral Maxillofac Implants 1989;4:211-217
  2. 上顎において621本のフィクスチャーによる250個のインプラント補綴物の2~8年の安定率は99%。下顎において506本のフィクスチャーによる247個のインプラント補綴物の2~8年の安定率は97%
    Myron Nevins,DDS INT J Oral Maxillofac Implants 1993;4:428-432
  3. ブローネマルクインプラント4641本において69本(1.5%)が早期に失敗したそのうち多数を占めたものは骨が軟質で著しい吸収を示す上顎、および7mmのフィクスチャーに認められた。
    Bertil Friberg,DDS INT J Oral Maxillofac Implants 1991;2:142-146

※いずれも「研究者」による論文であるため、術者の技量によって異なることがあることを念頭に入れておく必要があります。

インプラント歯科治療の代表的なトラブル

(1) 埋入したインプラントが数週間の間にとれてしまった
細菌感染により、インプラントがとれてしまったケースです。この場合、インプラントが骨と結合できないので、再度埋入手術を行う必要があります。なお、顎のダメージが小さくて済むように計画された治療では、失敗に終わった場合であっても、同じ場所にもう一度インプラントを埋め直すことにより、1回目よりも非常に高い確率で成功します。

(2) 痛み、腫れが収まらない
骨再生治療を行ったり、埋入したインプラントの本数が多い場合は、他のケースと比較して腫れや痛みの度合い・期間ともに長くなる場合があります。また、患者さんの体質などによっても痛みの度合いや期間は変わってくるものです。

主治医の先生から事前に説明された期間や度合い以上に腫れや痛みが続き、処方された鎮痛剤を服用しても痛みや腫れが収まらない場合は、速やかにクリニックに相談する必要があります。 ただ、これらの痛みや腫れは、手術で切開した部位が広範囲のため腫れや痛みが続いているものが大半で、インプラント自体の失敗ではありません。

(3)唇のしびれ
下の歯にインプラントを埋入した場合に、しびれを感じる場合があります。これは、下顎の骨の中に神経が通っており、インプラントがこの神経を圧迫した場合に唇にしびれを感じることがあります。このしびれは、傷口の腫れが引くとともに徐々に引いていきます。